技能実習
2026.05.11
2027年、日本の外国人材受け入れ制度は大きな転換点を迎えます。
これまで主流だった「技能実習制度」は見直され、新たに「育成就労制度」がスタートする予定です。
この制度は単なる名称変更ではありません。「人材育成」から「人材確保」へと目的が明確にシフトし、企業に求められる役割も大きく変わります。
本記事では、2027年から始まる育成就労制度について、制度の概要から実務対応、企業が押さえるべきポイントまでを体系的に解説します。
目次
育成就労制度は、技能実習に代わり「人材確保と育成」を目的とした新制度
転籍の解禁や日本語要件の強化により、企業には選ばれる環境づくりが求められる
制度対応には、育成計画や支援体制の整備を含めた戦略的な受け入れが重要
ここでは、制度創設の背景と目的、そして従来の技能実習制度との違いを整理します。
従来の技能実習制度は、「技能移転による国際貢献」を目的として設計されていました。しかし実態としては、人手不足を補う制度として活用されてしまうケースもあり、制度目的と現場のニーズにズレが生じていました。
こうした課題を踏まえ、育成就労制度では目的が大きく見直され、「人材の育成と確保」が明確に打ち出されています。
つまり、単に一定期間働いて帰国する前提ではなく、日本での就労を通じてスキルを身につけ、その後も継続して働くことを前提とした制度へと転換されます。
育成就労制度と技能実習制度の最大の違いは、「キャリア形成」と「人材の流動性」にあります。
具体的には、以下のような違いがあります。
・キャリアパスが前提になっている
育成就労制度では、3年間の就労を通じて特定技能1号レベルへの到達を目指す仕組みが前提です。制度自体がキャリア形成の一部として設計されており、技能習得から在留資格の移行までがスムーズに行えます。
・転籍(勤務先変更)が可能になる
技能実習では原則認められていなかった転籍が、一定条件のもとで認められます。これにより、外国人材がより良い職場環境を選べるようになり、企業側は待遇や環境面で選ばれる必要があります。
・日本語能力の向上が制度に組み込まれている
入国時の最低要件に加え、就労中も段階的な日本語能力の向上が求められます。企業には、教育機会の提供や学習支援などの体制整備が必要になります。
ここでは、どのような職種が対象になるのか、また外国人材に求められる日本語レベルやキャリアパスについて解説します。
育成就労制度の対象となるのは、人手不足が深刻であり、かつ就労を通じて技能習得が可能な分野です。基本的には、特定技能制度と連動した分野が対象となり、製造業や建設、介護、外食など幅広い業種が含まれます。
一方で、専門資格が前提となる業務や、短期間での育成が難しい分野などは対象外となる可能性があります。そのため、自社の業務が制度の対象に該当するかは事前に確認が必要です。
また、日本語能力については、入国時点で一定の基準が設けられます。目安としては、以下の通りです。
つまり、「全く日本語ができない状態」での受け入れは難しくなり、最低限のコミュニケーション能力を前提とした採用になります。
育成就労制度は単独の制度ではなく、「特定技能制度への接続」を前提に設計されています。
基本的な流れは以下の通りです。
従来の技能実習では、一定期間で帰国するケースが多く、人材が定着しにくいという課題がありました。一方、育成就労制度では、長期的な就労を前提としたキャリア設計が可能になります。
そのため企業にとっては、「3年だけ働いてもらう人材」ではなく、「将来的に中核人材として活躍する可能性のある人材」として育成していく視点が重要です。
育成就労制度では、企業側の受け入れ姿勢がこれまで以上に問われます。特に重要なのが「転籍(職場変更)」と「支援体制」です。この2つを正しく理解していないと、人材の流出や制度違反につながるリスクもあります。
育成就労制度では、一定の条件を満たすことで、外国人本人の意思による転籍が認められます。
主なポイントは以下の通りです。
これまでの技能実習制度では、転籍は原則不可でした。しかし今後は、外国人材が自ら職場を選べる環境になります。
その結果、待遇・職場環境・人間関係などに問題がある企業は、人材が定着しにくくなる可能性があります。
転籍が可能になることで、企業にとって重要になるのが「選ばれる環境づくり」です。特に以下のような支援体制が求められます。
これらは単なる“配慮”ではなく、制度上も求められる重要な要素です。対応が不十分な場合、受け入れ継続が難しくなる可能性もあります。
また、外国人材にとっては「どの企業で働くか」を選べる時代になるため、口コミや評判も採用に影響を与えるようになります。
育成就労制度は2027年の施行に向けて段階的に整備が進んでいます。制度開始後に慌てないためにも、企業は事前にスケジュールや移行の流れを把握し、準備を進めておくことが重要です。
ここでは、導入までの流れとよくある疑問を整理します。
育成就労制度は、すでに法改正が行われており、今後は詳細ルールの整備と運用準備が進められていきます。
大まかな流れは以下の通りです。
企業側としては、今年から具体的な申請準備や体制整備が必要になります。特に、以下の準備は早めに着手しておくべきです。
また、施行後すぐにスムーズな受け入れを行うためには、「事前申請」を活用した準備が重要になります。
育成就労制度に関して、企業からよくある疑問をまとめます。
A. 2026年頃から事前申請の案内が開始される見込みです。制度施行前に準備を進めることで、スムーズな受け入れが可能になります。
A. すでに受け入れている技能実習生は、原則としてそのまま技能実習制度の枠組みで継続します。途中で育成就労へ切り替えることは基本的にできません。
A. 完全に即時廃止されるわけではなく、一定期間の経過措置が設けられます。新規受け入れは段階的に育成就労へ移行していく見込みです。
A. いいえ。制度対象分野であることに加え、育成体制や支援体制が整っていることが前提となります。従来以上に受け入れ基準は厳格化される傾向にあります。
このように、育成就労制度は単なる制度変更ではなく、企業の採用・育成・マネジメントの在り方そのものを見直す契機となります。早期に情報をキャッチアップし、計画的に準備を進めることが成功の鍵となるでしょう。
外国人材の活用は、これからの企業成長に欠かせない重要な経営テーマです。
一方で、「言葉の壁」や「文化の違い」により、十分に力を発揮してもらえないケースも少なくありません。
公益社団法人東京都建設事業協会では、「外国人技能実習制度」および「特定技能制度」を活用し、企業様の状況や課題に応じた最適な外国人材活用を支援しています。
また、以下のような包括的なサポート体制を整えています。
育成就労制度の開始を見据え、今後は「人材をどう育て、どう定着させるか」がより重要になります。外国人材の受け入れや活用に少しでも不安や課題を感じている場合は、ぜひ一度ご相談ください。