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制度の本質を理解しよう!技能実習と特定技能の背景と目的

2025.04.17

人手不足が深刻化するなか、外国人材の受け入れを検討する企業が年々増えています。
建設、介護、製造業、外食産業など、日々の業務を支える多くの現場では、すでに外国人が戦力として活躍しています。

「うちもそろそろ外国人を採用したい」と考えたとき、まず気になるのが、どの制度を使えばよいのかという点です。
中でもよく耳にするのが「技能実習」と「特定技能」という2つの制度ですが、実はこの2つには制度設計の目的や成り立ちに大きな違いがあります。

制度の目的や背景をきちんと理解しないまま導入してしまうと、「思っていた人材ではなかった」「制度に合わない業務だった」などのトラブルにつながりかねません。

この記事では、技能実習制度と特定技能制度の背景や目的の違いをわかりやすく解説します。
受け入れ前に知っておくべき制度の本質を理解し、貴社に合った形で外国人材の受け入れを進めるヒントになれば幸いです。

 

目次

  • 技能実習制度の背景と成り立ち
  • 技能実習制度の目的と特徴
  • 特定技能制度が生まれた理由
  • 特定技能制度の目的と特徴
  • 技能実習と特定技能の違いと注意点
    • 注意したいポイント
  • 自社に合った制度を選ぶには
    • 受け入れ目的を明確にする
    • 社内体制との相性もチェック
  • まとめ

技能実習制度の背景と成り立ち

技能実習制度は、1993年に創設された制度で、日本国内で働きながら日本の技術や知識を学び、母国の発展に役立てることを目的としています。制度のルーツをたどると、1981年に始まった「研修制度」に行きつきます。

当初の目的は、日本の企業や現場で培われた技能を、開発途上国の人材に移転すること。つまり「国際貢献」の一環としてスタートしました。日本で働き、実践的に学ぶことを通して、帰国後に現地の産業や経済を支える人材を育てるという狙いがありました。

制度の設計上も、技能実習生は「労働者」ではなく、「実習生」としての位置づけになっており、企業側にも“教育する側”としての姿勢が求められています。

ただし、現場では深刻な人手不足が続いていることもあり、実際には労働力の一部として活用されているケースも多くなっています。このギャップが、制度への誤解や課題の一因となってきました。

出典:法務省「日本の技能実習制度の発展の経緯と展望」

技能実習制度の目的と特徴

技能実習制度の最大の目的は、「技能の移転」です。
つまり、日本で働きながら現場の技術や知識を学び、帰国後にそのスキルを活かして母国の産業発展に貢献してもらうことが制度の柱となっています。

このため、技能実習生の受け入れにあたっては、企業側にも“教育機関”としての姿勢が求められます。ただ単に労働力として活用するのではなく、しっかりとした指導体制のもとで、技能や知識を「教える」ことが制度の前提です。

実習期間は、段階的に3つのステージに分かれています。

  • 技能実習1号(1年目):基礎的な技能の習得
  • 技能実習2号(2~3年目):より実践的な技術の定着
  • 技能実習3号(4~5年目):優良企業に限って認められる延長ステージ

それぞれの段階で技能評価試験があり、一定の成果が認められた場合に次のステージに進むことができます。

また、技能実習制度では、転職(転籍)が原則として認められていません。
そのため、受け入れ企業は長期間にわたって同じ実習生を雇用することができますが、同時に労働環境に問題があっても本人が異動できないという課題も存在します。

こうした制度の設計から、現場でのトラブルや制度の趣旨とのズレが問題視されるケースも出てきており、政府でも制度見直しの動きが進められています。

特定技能制度が生まれた理由

2019年に創設された「特定技能制度」は、従来の技能実習制度ではカバーしきれなかった課題を受けて、新たに導入された外国人材受け入れの仕組みです。

背景にあるのは、深刻化する人手不足です。
とくに介護・建設・農業・外食・宿泊といった現場では、国内の人材確保が難しくなっており、「即戦力となる外国人材の受け入れ」が強く求められていました。

これまでも技能実習制度が存在していましたが、本来の目的は「人材育成」や「国際貢献」であり、制度上は“労働力確保”のために設計されたものではありません。そのため、実際の現場ニーズとはズレが生じやすく、制度の限界も見え始めていました。

こうした課題を受け、政府は「労働力不足を補うこと」を正面から目的に据えた新制度として、特定技能制度を創設。制度上も、初めから“労働者”としての受け入れが明確に認められていることが大きな特徴です。

また、特定技能制度では、本人のスキルや日本語能力を確認するための試験が設けられており、一定の能力を証明した上で就労が認められるため、受け入れ企業としても“戦力”として期待しやすい制度設計となっています。

特定技能制度の目的と特徴

特定技能制度は、人手不足の深刻な業種において、一定の専門性や技能を持つ外国人を即戦力として受け入れることを目的とした制度です。
制度開始当初から「労働力の確保」が明確に位置づけられており、従来の技能実習制度とは根本的なスタンスが異なります。

対象となる業種は、政府が「人手不足が特に深刻」と判断した14分野に限定されています。以下がその一覧です。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

特定技能には「1号」と「2号」の2段階があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。

項目 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 最長5年 無期限(更新可)
家族の帯同 原則不可 可能(配偶者・子)
対象職種 14業種 建設・造船など一部業種
雇用形態 フルタイム雇用 フルタイム雇用

「特定技能1号」は、主に現場レベルの業務を担う外国人材に適用され、日本語試験および技能試験に合格することで取得可能です。
一方、「特定技能2号」はより高度な技能を持つ人材に適用され、長期的な定住や家族帯同も認められます。

また、特定技能では原則として転職(受け入れ先の変更)も可能です。
これにより、労働環境に不安がある場合やキャリアアップを目指す場合など、本人の意思を尊重した柔軟な働き方が可能になります。

技能実習と特定技能の違いと注意点

「技能実習」と「特定技能」は、どちらも外国人材を受け入れる制度ですが、制度の設計目的や運用の仕方が大きく異なります。
この違いを理解せずに導入すると、現場でのトラブルやミスマッチにつながるおそれがあります。

比較項目 技能実習 特定技能
制度の目的 技能移転・国際貢献 人手不足への対応
在留期間 最長5年(原則延長なし) 最長5年(1号)/長期在留可(2号)
転職・転籍 原則不可(例外的に可能) 一定条件で可能
家族の帯同 原則不可 1号:不可/2号:可
試験の有無 技能評価試験あり 日本語・技能試験あり
対象業種 製造・農業など広範囲 人手不足14業種に限定
雇用形態 実習(労働契約あり) 労働者としての雇用契約

注意したいポイント

  • 制度の目的に合った使い方をすることが重要です。
    技能実習は「育成」、特定技能は「即戦力」がキーワードです。「安価な労働力を確保したい」という動機だけで導入するのは、どちらの制度においても適切ではありません。
  • 受け入れ体制の整備が不可欠です。
    どちらの制度でも、外国人材が安心して働けるよう、生活支援・教育体制・労務管理などを整えることが求められます。
  • 誤った運用はリスクにつながります。
    法令違反や制度の趣旨に反する対応を行うと、受け入れ停止措置や監査の対象となることもあります。制度を正しく理解したうえで運用することが、企業側の信頼にもつながります。

出典:出入国在留管理庁「特定技能制度」

自社に合った制度を選ぶには

外国人材の受け入れを検討する際には、制度の特徴を踏まえて、自社のニーズと照らし合わせることが大切です。
「技能実習」と「特定技能」は、どちらもメリットがありますが、目的や活用方法が異なるため、制度の選択を誤るとミスマッチを生む原因になります。

受け入れ目的を明確にする

まずは、「自社が外国人材を必要とする理由」をはっきりさせましょう。

  • 教育・育成を重視したいのか?
  • 即戦力としてすぐに現場に入ってもらいたいのか?
  • 長期的に働いてもらいたいのか、それとも数年間の期間限定か?

たとえば、
「教育の仕組みが整っており、帰国後の活躍も見据えて支援したい」と考えるなら、技能実習制度が適しているかもしれません。
一方で、「現場で即戦力として働いてもらいたい」「スキルや日本語力のある人を求めている」という場合には、特定技能制度のほうが目的に合っています。

社内体制との相性もチェック

受け入れには、社内体制の整備も欠かせません。
たとえば、技能実習では監理団体との連携や指導体制の構築が求められ、定期的な報告や審査対応が必要です。
特定技能の場合は、在留資格管理や生活支援の責任を企業自身が直接担うため、それなりの準備と体力が必要です。

また、言語面や文化面のサポート体制も含め、「受け入れて終わり」ではなく、「育て、支える」視点が重要になります。

まとめ

技能実習と特定技能は、外国人材を受け入れる制度として知られていますが、背景や目的には大きな違いがあります。
制度の仕組みだけでなく、その成り立ちや理念を理解することで、自社に合った適切な受け入れ方が見えてきます。

制度の“使い方”だけでなく、“なぜその制度があるのか”という本質に目を向けながら、安心できる受け入れ体制を整えていきましょう。

 

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