技能実習
2026.09.07
2027年4月から始まる育成就労制度では、外国人材を単なる人手不足の補完ではなく、就労を通じて技能や日本語能力を育てる視点が重要になります。
定着につなげるには、日本語研修だけでなく、仕事で必要な技能を段階的に学べる仕組みや相談体制、評価・キャリアとの連動が重要です。
本記事では、育成就労外国人が意欲的に働き続けられる教育体制の作り方を、人事・採用担当者向けに解説します。
目次
ここでは、制度の基本的な仕組みと、教育体制を整えるうえで押さえておきたいポイントを解説します。
育成就労制度は、現行の技能実習制度を発展的に解消し、新たに設けられる制度です。
大きな特徴は、「人材育成」に加えて「人材確保」が目的として明確に位置づけられていることです。原則3年間の就労を通じて技能を身につけ、特定技能1号への移行につなげます。
育成就労では、就労開始前だけでなく、就労期間を通じて日本語能力を継続的に伸ばしていくことが重要になります。
ただし、資格試験に向けた日本語学習だけでは十分ではありません。
製造現場であれば、「作業指示を理解する」「異常を報告する」「安全上の注意事項を理解する」など、実際の業務で必要な日本語と技能をセットで学べる教育が効果的です。
育成就労制度では、一定の要件を満たした場合、本人の意向による転籍が認められます。
そのため、「転職できないから残る」のではなく、「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる環境づくりが重要です。
外国人材への教育は、業務を覚えてもらうだけでなく、成長を実感し、将来のキャリアを描ける環境づくりにもつながります。
ここでは、「学べる環境」が外国人材の意欲や定着につながる理由を3つの視点から解説します。
学ぶ内容と仕事が結びついていれば、「できる仕事が増えた」という成長を実感しやすくなります。
たとえば、「基本作業→一人で担当→複数工程を担当→後輩を指導」と段階を設ければ、自分の成長を把握できます。
さらに、習得した技能を評価や役割の拡大につなげることで、学習する目的も明確になるでしょう。
厚生労働省の調査では、外国人を雇用する事業所の46.2%が「日本語能力等のためコミュニケーションが取りにくい」ことを課題として挙げています。
職場で必要な日本語を学べれば、指示の理解や報告、質問などもしやすくなります。
「何を身につければ次の仕事を任されるのか」を明確にすることで、学習への意欲を高めやすくなります。
育成就労から特定技能1号への移行、その先の熟練職やリーダーなど、長期的なキャリアを示すことも重要です。
外国人材の定着につながる教育体制をつくるには、日本語研修だけでなく、技能教育や相談体制、評価、キャリア形成まで一体的に設計することが重要です。
ここでは、企業が取り組みたい具体的な教育体制の作り方を解説します。
日本語教育では、資格試験の対策だけでなく、実際の仕事で必要になる日本語を取り入れましょう。
たとえば製造現場なら、「作業指示を理解する」「わからないことを質問する」「異常の発生箇所や状況を報告する」など、具体的な業務場面を想定して学習します。
「先輩を見て覚える」だけのOJTでは、本人も指導者も習得状況を把握しにくくなります。
「見学→補助→指導を受けながら実施→一人で実施→後輩へ指導」のように段階を設け、スキルマップなどで現在地を可視化しましょう。
直属の上司には、評価への影響を心配して悩みを相談しにくい場合があります。そのため、上司とは別にメンターや相談担当者を設けることも有効です。
仕事や日本語だけでなく、人間関係や生活、キャリアなどについて定期的に話せる機会をつくり、問題を早期に把握できる体制を整えましょう。
研修を受けても仕事や評価が変わらなければ、学習への意欲を維持しにくくなります。
「この技能を習得すれば一人で担当できる」「次のレベルでは後輩指導を任せる」など、学習成果と役割を結びつけることが重要です。
外国人材だけに日本の職場への適応を求めるのではなく、日本人社員への教育も必要です。
「一文一指示を意識する」「曖昧な表現を避ける」「写真や実物を使う」「相手に内容を言い返してもらい理解を確認する」など、伝わりやすいコミュニケーション方法を共有します。
ここでは、基本的な導入手順と効果測定の方法を紹介します。
採用時には、仕事内容や給与、勤務時間、残業、休日などの労働条件を具体的に説明します。
さらに、「入社後に何を学ぶのか」「1年後・3年後にどのような仕事を目指せるのか」まで共有しましょう。事前に認識をすり合わせることで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
入社時に日本語能力や職務技能を確認し、3か月、6か月、1年などの期間ごとに目標を設定します。
一人ひとりの習熟度に合わせて学習内容を調整することが、効率的な育成につながります。
入社後は定期的に面談を行い、「できるようになった仕事」「困っていること」「次に覚えたい仕事」などを確認します。
状況に応じて教育内容や支援方法を見直し、問題を早期に把握できる体制を整えましょう。
教育の成果は、離職率だけで判断せず、複数のKPIから確認することが重要です。
| KPI | 確認する内容 |
|---|---|
| 12か月定着率 | 入社1年後の在籍割合 |
| 日本語・技能到達度 | 学習目標の達成状況 |
| 独り立ち期間 | 単独で業務を行えるまでの期間 |
| 業務品質 | ミスや手戻りなどの状況 |
| キャリア明確度 | 次に目指す技能・役割を理解しているか |
教育・業務成果・定着をあわせて確認することで、教育体制の改善につなげやすくなります。
ここでは、教育体制にかかる主なコストと、投資効果を考える際のポイントを解説します。
教育にかかる費用を把握するときは、外部研修への支払額だけで判断しないことが重要です。
主に以下のようなコストが発生します。
特にOJTやメンター業務を通常業務に上乗せすると、担当社員の負担が見えにくくなります。勤務時間として工数を把握し、教育コストに含めましょう。
教育への投資効果を考える際は、定着によって削減できるコストも確認します。
外国人材が早期離職すると、求人・紹介費だけでなく、採用担当者の工数や入社手続き、OJT、欠員期間の負担などが再び発生します。
そのため、教育体制のROIは「研修にいくら使ったか」だけではなく、離職の減少や独り立ち期間の短縮、業務品質の改善によって、どれだけの効果が生まれたかまで含めて評価することが重要です。
育成就労外国人の教育では、研修だけでなく、在留資格や労働条件、安全衛生などのルールを守ることも重要です。
ここでは、人事担当者が押さえておきたいポイントを解説します。
外国人材は、在留資格で認められた範囲内で就労する必要があります。
採用時はもちろん、配置転換や業務変更時にも在留資格との整合性を確認しましょう。育成就労では、社内のOJTや研修と育成就労計画との整合性も重要です。
外国人労働者にも日本の労働関係法令が適用され、国籍を理由とした賃金や労働時間などの差別的な取り扱いは禁止されています。
評価や昇給も、職務内容や能力など明確な基準に基づいて判断しましょう。
安全衛生教育では、本人が内容を理解できるよう、やさしい日本語や多言語教材、写真、実演などを活用します。
教育後に理解度を確認し、「説明しただけ」で終わらせないことが重要です。
仕事や人間関係などの問題を早期に把握するため、上司だけでなく、人事やメンターなど複数の相談先を用意しましょう。
教育と適切な雇用管理をあわせて整えることが、安心して働ける環境につながります。
育成就労外国人の定着には、日本語・技能教育だけでなく、相談支援や評価、キャリア形成まで含めた「学べる環境」の整備が重要です。
外国人技能実習生の受け入れや職業訓練を検討している企業は、公益社団法人東京都建設事業協会へご相談ください。
一般監理事業(優良監理団体)として技能実習生の受け入れを支援するほか、職業訓練センターでは、日本人・外国人を対象に実践的な職業訓練を提供しています。
外国人材が安心して学び、成長できる環境づくりを進めたい企業は、ぜひお問い合わせください。