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労務管理のポイントはここ!技能実習生との適正な雇用関係とは

2025.10.06

企業における人手不足の解消と国際貢献の両立を目的に、外国人技能実習制度を活用する企業が増えています。

一方で、言葉や文化の違いに加え、日本の労働関連法への理解不足から、トラブルや違反が生じるケースも少なくありません。

本記事では、企業の人事担当者向けに、技能実習生との適正な雇用関係を築くために押さえるべき労務管理のポイントをわかりやすく解説します。

目次

  • 技能実習制度の基本理解|まず押さえておきたい制度の枠組み
    • 実習生の立場と企業の責任
  • 契約とルール整備 ― 書面と社内体制の透明化
    • 雇用契約書と労働条件通知書
    • 就業規則と社内ルールの周知
  • 賃金・労働時間・休日の管理|最低ラインを守るために
    • 最低賃金と割増賃金の遵守
    • 労働時間と休日・休暇のルール
  • 社会保険と労働保険|受け入れ企業が負う法的義務
    • 加入が必要な保険の種類
    • 「脱退一時金」制度も活用できる
  • ハラスメント・人権侵害の防止|「指導」と「支配」の違いを理解する
    • 職場におけるハラスメントの禁止と対策
  • 生活支援と安全配慮 ― 実習生が安心して働ける環境づくり
    • 住環境の整備と配慮事項
    • 安全教育・健康管理の徹底
    • 生活面のサポート
  • 行政対応と監査への備え|違反を防ぐ“見える化”のすすめ
    • 監査で見られるポイント
    • 書類と運用の“見える化”
  • まとめ|適正な雇用は企業の信頼につながる

技能実習制度の基本理解|まず押さえておきたい制度の枠組み

技能実習制度は、開発途上国等の若者を受け入れ、日本での技能習得を通じて人材育成・技術移転を図る国際協力制度です。

しかし、制度の性質上、実習生は「労働者」であると同時に「研修生」としての側面を持ちます。これが、日本人従業員との雇用関係において誤解を生む原因となることもあります。

実習生の立場と企業の責任

技能実習生は、労働基準法や最低賃金法、労災保険法など、国内の労働関連法規の保護を受ける「労働者」です。

つまり、日本人と同様に、賃金、労働時間、安全衛生、保険など、すべての労働条件において法令を順守する必要があります。

契約とルール整備 ― 書面と社内体制の透明化

技能実習生とのトラブルを防ぐ第一歩は、契約や就業ルールを明文化し、実習生本人にも理解してもらうことです。

書類整備は「説明したつもり」を防ぐ最良の方法です。

雇用契約書と労働条件通知書

以下の書類は必須です。

書類名 内容 ポイント
雇用契約書 雇用期間、業務内容、賃金、労働時間などを記載 実習生の母国語併記が望ましい
労働条件通知書 法定の労働条件を明示 署名・押印をもって交付証明を残す

OTITが提供する多言語のテンプレート(ベトナム語、中国語、インドネシア語など)を活用することで、認識のずれを未然に防ぐことができます。

就業規則と社内ルールの周知

従業員数10名以上の企業は、労働基準法に基づき就業規則の作成と届け出が義務付けられています。

実習生にも適用されるため、内容には以下を明記しておくとよいでしょう。

  • 労働時間・休日・休暇制度

  • ハラスメント禁止や差別防止の方針

  • 懲戒処分や退職に関する取り扱い

文面が難しい場合は、「やさしい日本語」での説明や、口頭での補足説明をセットにしましょう。

賃金・労働時間・休日の管理|最低ラインを守るために

技能実習生の労務管理において特にトラブルが多いのが、賃金や労働時間、休日の管理です。

日本人と同様に法定基準を適用する必要があり、基準を下回る扱いは違法となります。

最低賃金と割増賃金の遵守

技能実習生にも、地域別最低賃金が適用されます。都道府県ごとに設定された金額を下回る支給は違反です。

支給形態が「月給制」であっても、労働時間で換算して最低賃金を割らないように注意が必要です。

また、以下の割増賃金も適用されます。

労働時間区分 割増率 例
時間外労働(法定) 25%以上 所定時間超え(例:8時間超)
深夜労働(22時~5時) 25%以上 夜勤業務など
休日労働(法定休日) 35%以上 週1日以上の法定休日勤務

計算ミスや未払いが多いポイントでもあるため、給与計算は自社任せにせず、監理団体とも連携して確認体制を整えましょう。

労働時間と休日・休暇のルール

日本の労働基準法では、1日8時間・週40時間を超える労働は原則禁止されており、超える場合は36協定(時間外・休日労働に関する協定)を労基署に届け出なければなりません。

また、有給休暇は、実習開始から6カ月経過し一定の出勤率を満たした実習生にも10日以上発生します。

言葉の壁や「休んではいけない」という意識から、有給を申し出られないケースもあるため、企業側から取得を促す配慮も重要です。

社会保険と労働保険|受け入れ企業が負う法的義務

技能実習生も、日本人従業員と同様に社会保険・労働保険への加入が義務付けられています。

未加入は法令違反となり、行政指導や処分の対象になるだけでなく、実習生本人の生活を不安定にさせる要因にもなります。

加入が必要な保険の種類

保険の種類 内容 適用条件
労災保険 業務中・通勤中のケガや病気に対する補償 全労働者に強制適用
雇用保険 失業時の給付など 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合
健康保険 医療費の補助 常用的に雇用されるすべての労働者
厚生年金保険 老後・障害・死亡時の保障 健康保険とセットで適用

社会保険料の一部は事業主が負担しますが、それを理由に加入を避けることはできません。

「脱退一時金」制度も活用できる

厚生年金に加入した実習生が帰国後に申請すれば、一定の条件のもと脱退一時金を受け取ることができます。

これは、支払った保険料の一部が返金される制度で、実習生にとってもメリットがあります。

企業側は、このような制度があることも事前に説明しておくと親切です。

ハラスメント・人権侵害の防止|「指導」と「支配」の違いを理解する

技能実習生は、文化や言語の壁により、自ら被害を訴えることが難しい立場にあります。

そのため、企業側が意識してハラスメントや人権侵害を防止する体制を整える必要があります。

職場におけるハラスメントの禁止と対策

中小企業も2022年4月から、パワーハラスメント防止措置が義務化されました。

技能実習生も当然その対象で、企業は以下の体制整備が求められます。

  • ハラスメント禁止の方針を就業規則や社内掲示で明示

  • 相談窓口の設置(通訳対応があると尚良い)

  • 管理職や現場リーダーへのハラスメント研修

たとえ“指導”のつもりでも、言葉や態度によっては威圧的・差別的と受け取られることもあるので注意しましょう。

生活支援と安全配慮 ― 実習生が安心して働ける環境づくり

技能実習生にとって、仕事だけでなく「暮らしの環境」も就労継続の大きなカギを握ります。

住まいの整備、安全配慮、日常のサポートを含めた総合的なケアが求められます。

住環境の整備と配慮事項

実習生の多くは、受け入れ企業や監理団体が用意した寮や社宅で生活します。その際に必要な配慮は以下の通りです。

  • 一人あたりの居住スペースの確保(過密不可)

  • エアコン、寝具、収納等の基本設備の完備

  • プライバシーの尊重(男女別室、カーテンの設置など)

  • 防火・防災・衛生面での安全確保

また、寮費や光熱費を給与から控除する場合は、事前の説明と労使協定が必要です。

過大な控除は違法となるため注意しましょう。

安全教育・健康管理の徹底

言葉や文化の違いから、実習生は労災や体調不良を伝えにくい傾向があります。だからこそ、企業側は以下のような工夫が必要です。

  • 入社時の安全教育(母国語資料や動画活用)

  • 定期健康診断の実施とフォロー

  • 通勤経路や作業内容のリスク説明

  • ケガや病気時の受診・労災対応体制

「わからないことがあっても聞ける」「体調が悪いと言える」職場の空気づくりが、予防と早期対応につながります。

生活面のサポート

外国人にとって、日本での生活は想像以上にハードルが高いものです。

以下のような日常的な支援も、実習生の定着率を高める要因となります。

  • ゴミ出し、買い物、交通ルールなどの生活指導

  • 銀行口座開設や携帯契約のサポート

  • 多言語での案内掲示やマニュアル

  • 定期的な個別面談による悩みのヒアリング

実習生の「生活不安」を取り除くことが、結果として「労務トラブルの予防」につながります。

行政対応と監査への備え|違反を防ぐ“見える化”のすすめ

技能実習制度の運用状況は、行政機関による監査や立入検査の対象となります。

悪質な違反が確認された場合、受け入れ停止や企業名の公表といった厳しい措置が取られる可能性もあるため、事前の備えが重要です。

監査で見られるポイント

厚生労働省や出入国在留管理庁、外国人技能実習機構(OTIT)などが実施する監査では、以下のような点がチェックされます。

  • 労働時間や賃金支払いが法令に基づいているか

  • 安全衛生・健康診断が適正に実施されているか

  • ハラスメント防止体制が整備されているか

  • 技能実習計画が適切に運用されているか

  • 就業規則や労使協定が整っているか

違反があると是正勧告や改善命令が出され、対応が不十分な場合は計画取消・受入停止などの処分が科されることもあります。

書類と運用の“見える化”

監査対応の第一歩は、「やるべきことをやっている」と説明できる状態、すなわち“見える化”です。

以下のような管理体制を整えましょう。

準備しておくべき書類例

  • 雇用契約書(日本語+母国語)

  • 労働条件通知書・賃金台帳・出勤簿

  • 36協定届出書

  • 技能実習計画書

  • 健康診断結果の記録

  • 就業規則(届出控え含む)

  • ハラスメント防止マニュアル・相談窓口の体制図

書類を揃えるだけでなく、現場でルール通り運用されているかも大きなチェックポイントです。

書類と実態が一致していなければ、形式だけの管理と判断され、信頼を損ねてしまいます。

まとめ|適正な雇用は企業の信頼につながる

企業にとって、技能実習生は単なる労働力ではなく、組織の多様性を高め、将来的な国際展開への足がかりともなる存在です。

適切な受け入れ体制を構築し、法と心の両面からのサポートを実現することが、企業自身の信頼や成長にもつながります。

こうした取り組みを支える団体のひとつが、公益社団法人東京都建設事業協会です。

国際基準に基づき、インドネシア・ベトナム・スリランカ・中国などの送り出し機関と連携し、質の高い技能実習生の受け入れを推進しています。

技能実習生の受け入れには、専門的な知見と誠実な姿勢が求められます。

信頼できるパートナーとともに、安全・安心で実りある受け入れ体制を構築することが、企業・実習生双方にとっての「共に働く社会」への第一歩になるでしょう。

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