企業における人手不足の解消と国際貢献の両立を目的に、外国人技能実習制度を活用する企業が増えています。
一方で、言葉や文化の違いに加え、日本の労働関連法への理解不足から、トラブルや違反が生じるケースも少なくありません。
本記事では、企業の人事担当者向けに、技能実習生との適正な雇用関係を築くために押さえるべき労務管理のポイントをわかりやすく解説します。
目次
技能実習制度の基本理解|まず押さえておきたい制度の枠組み
技能実習制度は、開発途上国等の若者を受け入れ、日本での技能習得を通じて人材育成・技術移転を図る国際協力制度です。
しかし、制度の性質上、実習生は「労働者」であると同時に「研修生」としての側面を持ちます。これが、日本人従業員との雇用関係において誤解を生む原因となることもあります。
実習生の立場と企業の責任
技能実習生は、労働基準法や最低賃金法、労災保険法など、国内の労働関連法規の保護を受ける「労働者」です。
つまり、日本人と同様に、賃金、労働時間、安全衛生、保険など、すべての労働条件において法令を順守する必要があります。
契約とルール整備 ― 書面と社内体制の透明化
技能実習生とのトラブルを防ぐ第一歩は、契約や就業ルールを明文化し、実習生本人にも理解してもらうことです。
書類整備は「説明したつもり」を防ぐ最良の方法です。
雇用契約書と労働条件通知書
以下の書類は必須です。
| 書類名 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 雇用契約書 | 雇用期間、業務内容、賃金、労働時間などを記載 | 実習生の母国語併記が望ましい |
| 労働条件通知書 | 法定の労働条件を明示 | 署名・押印をもって交付証明を残す |
OTITが提供する多言語のテンプレート(ベトナム語、中国語、インドネシア語など)を活用することで、認識のずれを未然に防ぐことができます。
就業規則と社内ルールの周知
従業員数10名以上の企業は、労働基準法に基づき就業規則の作成と届け出が義務付けられています。
実習生にも適用されるため、内容には以下を明記しておくとよいでしょう。
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労働時間・休日・休暇制度
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ハラスメント禁止や差別防止の方針
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懲戒処分や退職に関する取り扱い
文面が難しい場合は、「やさしい日本語」での説明や、口頭での補足説明をセットにしましょう。
