技能実習
2026.02.05
外国人労働者の採用が活発化する中、技能実習生の受け入れを検討する企業が増えています。
しかし、制度の目的や仕組み、具体的な手続き、受け入れ後の対応までを正しく理解せずに進めると、思わぬトラブルや違法運用につながる可能性があります。
本記事では、技能実習制度の基本から、受け入れの具体的な流れ、必要な費用、注意点、そして制度見直しの最新動向まで、初めて受け入れを検討する企業の担当者向けにわかりやすく解説します。
目次
制度を適切に活用するためには、まずその成り立ちと目的を理解しておくことが重要です。
ここでは、技能実習制度の概要や創設の背景、実際の運用とのギャップについて整理します。
技能実習制度は1993年に創設され、表向きの目的は「開発途上国への技能移転を通じた人づくり支援」、すなわち国際貢献です。
日本の技術や知識を実務を通じて学び、自国の産業発展に役立ててもらうことが制度の理念とされています。
1960年代後半から、日本では発展途上国の人材に日本企業で技術研修を行い、帰国後にその技術を活かしてもらうことを目的とした研修制度が実施されていました。
1993年に技能実習制度として法制化され、2010年には入管法改正により「雇用契約に基づく実習」が義務化されました。
これにより、実習生は「労働者」としての側面を持つようになります。
2017年には「技能実習適正化法」が施行され、外国人技能実習機構(OTIT)の設置や、技能実習計画の認定制・監理団体の許可制などが導入され、制度全体の透明性と適正性の確保が図られました。
2024年時点で、技能実習生の在留者数は約45万人と、永住者に次ぐ規模の在留資格となっています。
主な出身国はベトナム、インドネシア、フィリピンなどで、建設・農業・介護・食品製造など幅広い業種で活躍しています。
一方で、低賃金での長時間労働やパワハラ、失踪などの問題も発生しており、制度のあり方が国内外で問われています。
技能実習生の受け入れは、企業にとって有益な仕組みですが、制度への正しい理解と責任ある対応が不可欠です。
ここでは、受け入れによって得られる利点と、押さえておくべき注意点を紹介します。
技能実習制度を活用すれば、海外から一定のスキルや意欲を持つ若者を継続的に受け入れることが可能です。
また、採用費用も長期的に見れば抑えられるケースが多く、実務に即した戦力として期待できます。
一方で、技能実習生は労働者として日本の労働法の対象です。
賃金、労働時間、就業条件の管理を適正に行わなければ、監督指導や処分を受けるおそれがあります。
また、制度は「人材育成」を目的としており、安価な労働力として扱うことは禁じられています。
ここでは、初めての企業でも進めやすいよう、技能実習生受け入れ手続きの流れをわかりやすく整理します。
まず、自社が受け入れ可能な業種・職種かを確認し、受け入れ人数や希望する国などを検討します。
実習可能な作業は国によって定められており、受け入れ人数も常勤職員数に応じて上限があります。
制度上の要件を満たすか、最初にチェックしておくことが重要です。
多くの企業は、技能実習生を監理団体を通じて受け入れます。
監理団体は実習生の募集や手続き、入国後の生活支援などを担う専門機関で、必ず法務省の許可を受けている団体から選びます。
過去の実績やサポート体制、費用などを比較し、自社に合った団体を選定しましょう。
監理団体を通じて、提携する海外の送り出し機関が人材を募集します。
募集後は、現地もしくはオンラインで企業側が面接を行い、実習生候補を選抜。その後、母国語で雇用条件を説明したうえで契約を結びます。
選抜した実習生ごとに、技能実習計画を作成する段階です。
作業内容や指導方法、労働条件などを細かく記載し、外国人技能実習機構(OTIT)に申請します。
認定を受けてはじめて、実習生の受け入れが進められます。
OTITから認定通知書を受け取った後、入管に「在留資格認定証明書(COE)」を申請します。
COE交付後、送り出し国の日本大使館でビザ(査証)申請を行い、発給が下りれば入国準備が整います。
実習生が来日すると、まず1か月の講習期間があります。日本語や生活ルール、法制度などを学んだ後、受け入れ企業に正式に配属されます。
この時点で技能実習がスタートします。
技能実習生の受け入れには、初期費用から毎月の運用費用まで、さまざまなコストが発生します。
ここでは、企業が事前に理解しておくべき費用構造と契約期間の仕組みについて解説します。
技能実習の受け入れには、まず監理団体への加入金や現地面接費用などの初期費用がかかります。
加えて、実習生の渡航費や現地での事前講習費、日本入国後の講習手当・生活支援費用なども企業負担です。
実際の金額は監理団体や受け入れ国によって異なりますが、入国までに1人あたり50万円前後が目安とされます。
さらに配属後は、監理団体への月額監理費のほか、賃金や社会保険料の企業負担分、技能検定の受験費用、退職時の帰国旅費など、継続的な支出が必要です。
技能実習は「技能実習1号」「2号」「3号」の段階に分かれており、基本的には1年+2年の計3年間が一般的な受け入れ期間です。
1年目終了時に技能評価試験に合格すれば、2号に進むことができます。
さらに、一定の要件を満たす優良な受け入れ企業に限っては、3号に移行し、合計5年間の受け入れが可能です。
ただし、3号に移行できる職種は限定されており、多くの場合は3年で一旦帰国となります。
技能実習生を円滑に受け入れるためには、配属後の職場環境づくりや生活支援も重要なポイントです。
ここでは、企業が取り組むべき主なサポート内容と管理体制の構築について解説します。
実習生の配属にあたっては、社内に「技能実習責任者」「技能実習指導員」「生活指導員」の3つの役割を設け、それぞれが実習生の技能習得や生活支援を担当します。
現場での指導に加え、メンタルケアや日常の悩みにも耳を傾けることで、信頼関係を築くことができます。
実習生には、法令に基づいた住居を提供する必要があります。
一定の居住面積を確保したうえで、エアコンや調理器具、インターネット環境など生活に必要な設備を整え、快適な住環境を用意します。
実習生は労働者として日本の労働法の対象であり、賃金や労働時間、休日管理などは日本人と同等に扱う必要があります。
就業規則の説明や出退勤の記録、残業時間の確認など、基本的な労務管理を徹底することがトラブル防止につながります。
実習生の多くはN5〜N4レベルの日本語能力で来日するため、配属後も継続して日本語を学ぶ環境を整えることが望まれます。
また、宗教・食習慣・休日の過ごし方など、文化の違いにも理解を示し、偏見なく受け入れる社内風土づくりが重要です。
監理団体は毎月定期的に訪問し、実習生と企業の双方に状況確認を行います。
相談しづらい問題があっても、第三者を介すことで早期に把握できるケースもあります。
さらに、OTIT(外国人技能実習機構)や多言語対応の相談窓口など、外部支援も積極的に活用することで、実習生が安心して働ける環境が整います。
技能実習制度はその本来の目的と実態との乖離が問題視され、制度の廃止と新制度への移行が決定されました。
2027年4月を目処に「育成就労制度」への完全移行が予定されています。
新制度では、外国人を日本の労働力として中長期的に育成・定着させる方向へと制度の性質が明確に転換されます。
在留期間は原則3年とされ、その後は特定技能1号への移行が可能になるなど、より実務的なキャリアパスが設計されています。
また、これまで原則禁止されていた転職も、一定条件のもとで認められるようになり、実習生の権利保護が強化される見込みです。
技能実習制度は職場の活性化に寄与する一方、適切な制度理解と準備が求められる制度です。
特に、受け入れの実務を担う監理団体の選定は、制度を安心して活用するための重要な鍵となります。
なかでも「一般監理事業」の認定を受けた優良監理団体は、国の厳格な基準を満たした団体であり、技能実習3号(4〜5年目)までの監理が可能です。
たとえば、公益社団法人東京都建設事業協会は、外国人技能実習生の受け入れ支援を行っており、通訳や現地面接の調整、配属後のサポートまで一貫した体制を整えています。
これから制度を活用したい企業にとって、経験豊富な監理団体との連携は制度運用の安心材料となります。
技能実習の導入を検討している方は、まずは実績のある団体に相談してみるのがよいでしょう。