技能実習
2025.12.05
2024年に成立した「育成就労制度」は、これまでの技能実習制度を大きく見直し、外国人材の育成と人材確保を両立する新たな仕組みとして注目を集めています。
2027年4月の施行に向けて、すでに多くの企業が受け入れ体制の整備を始めていますが、「実際に導入するには何を準備すればいいのか」「技能実習制度との違いは?」といった疑問を抱く担当者も少なくありません。
本記事では、育成就労制度の概要から、受入れ対象となる企業・分野、社内準備のポイント、必要な手続きを段階的に整理し、企業がスムーズに導入を進めるための実務的な手順を紹介します。
目次
育成就労制度は、これまでの技能実習制度の課題を改善し、外国人材の育成と人材確保を目的とした新制度です。
2024年6月に公布された改正入管法と育成就労法により創設され、2027年4月の施行が予定されています。
従来の技能実習制度は「国際貢献」を掲げながらも、実態は人手不足対策が中心で、転籍制限や人権問題などの課題がありました。
これらの反省を踏まえ、新制度では「外国人の職業能力向上を通じた人材確保」を明確な目的とし、より実務的で持続的な仕組みへと再構築されています。
主な特徴として、在留資格の一元化(最長3年)、転籍の柔軟化(1〜2年後は本人希望でも可能)、日本語要件の導入(入国時A1、1年後A2レベル)などが挙げられます。
また、帰国義務の撤廃により、外国人がより自由にキャリアを築ける環境が整備されました。
これにより、企業は外国人を一時的な労働力ではなく、将来を見据えて育成・定着を図る人材として受け入れることが可能になります。
育成就労制度は、あらゆる企業が自由に導入できるわけではありません。
ここでは、制度の対象となる業種や企業要件を整理します。
育成就労制度の対象分野(育成就労産業分野)は、特定技能制度の14分野を基本に、人手不足が深刻で技能育成に適した16分野が中心です。
主な分野には以下が含まれます。
介護
建設業
製造業(機械金属、電子機器、食品製造など)
農業・漁業
外食業・宿泊業
ビルクリーニング・自動車整備・造船業 など
これらは特定技能制度との整合性を図りながら、国内でのOJTによる育成が可能な分野が中心となっています。
逆に、短期雇用や単純作業に偏る業種は対象外となる見込みです。
企業の規模や海外拠点の有無によって、受入れ方式は次の2タイプに分かれます。
単独型(企業単独型):自社で海外子会社・現地法人を持ち、その従業員を日本で受け入れて育成する方式。大企業向け。
監理型(団体監理型):事業協同組合や商工会など、非営利の「監理支援機関」を通じて外国人を受け入れる方式。中小企業で一般的。
いずれの方式でも、受入れ企業には以下の条件が求められます。
日本人と同等以上の待遇・報酬を保証すること
社会保険への加入、労働基準法・安全衛生法などの法令順守
技能向上を目的とした「育成就労計画」の策定と実施
外国人の生活支援(住居確保、日本語教育、相談体制の整備)
不正行為・法令違反歴がないこと
導入を検討する前に、以下の点を確認しておきましょう。
自社の業種が対象分野に該当しているか
外国人と日本人が同等条件で働ける労働環境が整っているか
受入れ担当者・教育体制を社内で構築できるか
監理支援機関との連携体制を確立できるか
労働・入管関連法令違反などの履歴がないか
自社の体制を冷静に見直し、不備がある場合は先に整備を進めることが大切です。
制度上の「信頼性」や「教育力」が、受入れ許可の可否にも大きく影響します。
育成就労制度を導入するにあたって、企業がまず取り組むべきは社内の受入れ体制づくりです。
ここでは、外国人材を安心して受け入れるために必要な準備項目を、具体的に整理します。
外国人材の受入れでは、職場全体の協力体制が欠かせません。
まずは以下の3つの役割を明確にしておきましょう。
受入れ責任者:制度全体の運用や行政対応を統括する担当者
指導担当者(メンター):現場で業務指導・生活面の相談を行う担当者
生活支援担当者:住居や日常生活に関する支援窓口
特に指導担当者は、業務を教えるだけでなく、文化や言語の壁を越えて信頼関係を築く役割を担います。
外国人材と日本人社員の間で意思疎通をスムーズにするため、社内研修や多文化理解の学習機会を設けておくとよいでしょう。
育成就労制度では、受入れ企業が「育成就労計画」を策定し、外国人育成就労機構(※技能実習機構の後継)から認定を受けることが義務付けられます。
計画には、次のような内容を具体的に記載します。
就労期間(最長3年間)
習得を目指す技能・業務内容
日本語学習の目標(例:1年以内にN4レベル取得)
指導スケジュール・評価方法
生活支援・相談体制
また、定期的に進捗を評価し、計画との乖離があれば改善を行う必要があります。
育成就労計画は教育的な意図が明確であることが認定の前提となるため、単なる労働力確保の計画にならないよう注意しましょう。
外国人とともに働く日本人社員に向けて、多文化共生やハラスメント防止に関する社内研修を実施します。
文化・宗教・言語の違いを理解しておくことで、職場内のトラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、受入れ前には以下の環境整備も重要です。
マニュアルや掲示物の多言語化(やさしい日本語や英語・ベトナム語など)
作業指示書・安全教育資料の翻訳
社宅・寮の確保や地域生活支援(銀行口座、行政手続きなど)
翻訳アプリ・通訳ツールの導入
特に初期対応を丁寧に行うことで、外国人材の不安を軽減し、早期離職の防止にもつながります。
受入れに際しては、教育費・日本語講習費・渡航費・生活サポート費などが企業負担として発生します。
国や自治体の補助金制度(例:外国人材受入支援助成金など)を活用できる場合もあるため、最新情報を確認して予算に組み込みましょう。
受入れ責任者・指導担当者を任命した
育成就労計画を策定し、認定申請の準備を進めている
日本人社員への異文化研修を実施した
マニュアル・掲示物の多言語化を完了した
住居・生活支援体制を整えた
受入れにかかるコストと助成金制度を確認した
これらの準備を整えておくことで、導入後のトラブルを防ぎ、外国人材の定着率を高めることができます。
「受け入れてから整える」ではなく、受け入れる前に整えることが成功の第一歩です。
育成就労制度を導入する際は、以下の流れで主要な手続きを進めます。
受入れ方針の決定
自社の事業が対象分野に該当するか確認し、「単独型」か「監理型」かを選択します。
監理型の場合は、信頼できる監理支援機関を選定しましょう。
送出機関と候補者の選定
政府認定の送出機関を通じて、候補者の日本語能力や適性を確認し採用します。
不当な費用徴収を行う業者は避け、透明なプロセスを確保することが重要です。
育成就労計画の認定申請
外国人育成就労機構に「育成就労計画」を提出し、認定を受けます。
計画には教育内容や労働条件、生活支援体制などを明記します。
在留資格の申請と来日準備
計画認定後、出入国在留管理庁に「在留資格認定証明書(COE)」を申請。
ビザ取得後の来日を経て、市区町村での登録・社会保険加入などの支援を行います。
受入れ・監理・移行支援
受入れ後は定期的に監理支援機関や機構の確認を受け、状況を報告します。
修了後は、本人が希望すれば特定技能1号への移行支援も可能です。
手続きを進める際は、以下の点を確認しておきましょう。
自社の受入れ方式(単独型/監理型)を明確にしているか
信頼できる監理支援機関・送出機関を選定しているか
育成就労計画の認定申請を完了しているか
入管手続き・ビザ申請をスムーズに進める体制があるか
来日後の生活支援・報告業務の流れを社内で共有しているか
これらの流れを整理しておくことで、行政手続きの抜け漏れを防ぎ、スムーズな受入れが可能になります。
手続きの多くは監理支援機関がサポートしますが、最終的な責任は企業側にある点を忘れないようにしましょう。
育成就労制度は、外国人材の育成と企業の人材確保を両立する新制度として2024年に成立し、2027年4月の施行が予定されています。
企業にとっては、対象分野の確認や教育体制の整備、行政手続き、法令遵守など、早期の準備が求められます。
制度を円滑に運用するためには、信頼できる監理団体との連携が欠かせません。
公益社団法人東京都建設事業協会は、昭和36年に東京都知事の許可を得て設立された公益法人で、長年にわたり公共事業や都市基盤整備を通じて地域社会に貢献してきました。
近年では、外国人技能実習生の受入れにも注力し、国際交流や技術向上の支援を積極的に行っています。
同協会は、特定監理事業よりも厳しい基準を満たした「優良監理団体(一般監理事業)」として認定を受けており、技能実習1号から3号までを一貫して監理できる体制を整えています。
こうした高い監理水準により、企業と外国人材の双方が安心して成長できる環境を提供し、育成就労制度の円滑な導入を支援しています。
外国人材の受入れや制度移行を検討している企業にとって、東京都建設事業協会のような優良監理団体と連携することは、安定した運用と信頼性の確保に大きく役立つでしょう。