技能実習
2025.07.14
育成就労制度への移行が決まり、企業の人事・総務担当者にとっては外国人受入れ制度の大きな転換点となります。
本記事では、その背景や制度の概要、企業への影響、実務上の対応ポイント、留意点などを 7つのポイント に整理してわかりやすく解説します。
目次
技能実習制度は、もともと開発途上国への技能移転による国際貢献を目的に導入されました。
一方、日本では少子高齢化により人手不足が深刻化しており、外国人材の受け入れ拡大が急務となっています。
そのため新たに導入される育成就労制度は、これまでの技能実習制度とは異なり、外国人労働者をより長期的な戦力として活用することを目的としています。
育成就労制度とは、外国人に日本で実務経験を積ませながら、技能と日本語を身につけてもらい、将来的な戦力として育成する新たな制度です。
育成期間は原則3年で、その後一定の条件を満たせば特定技能への移行が可能となり、日本での就労を継続できます。
本制度の目的は、人材育成と人手不足対策の両立です。
従来の「国際貢献」という建前から転換し、国内で長く働ける即戦力の育成を重視しています。
出典:育成就労制度の概要
新旧制度の違いを押さえておきましょう。技能実習制度から育成就労制度への主な変更点は以下のとおりです。
比較項目 | 技能実習制度 | 育成就労制度 |
---|---|---|
制度の目的 | 技能移転による国際貢献が目的 | 人材育成と労働力確保が目的 |
在留期間 | 最長5年(1号〜3号) | 最長3年+特定技能で最長8年まで可 |
転籍の可否 | 原則不可 | 一定条件で可能(本人希望も可) |
日本語教育 | 明確な基準なし | N5〜N4取得を目標に支援が必要 |
監理団体の役割 | 監理団体が受入れ支援 | 「監理支援機関」に移行し基準が厳格化 |
送出機関の管理 | 高額費用や不透明な運用が課題 | MOC締結国に限定、費用も適正化 |
企業としては新制度の詳細を正確に把握し、従来の延長線で考えるのではなく、新たな前提に基づいた対応策を講じる必要があります。以上のように、制度の趣旨から運用ルールまで幅広い変更が予定されています。
育成就労制度への移行は、外国人材を受け入れる企業に様々な影響を与えます。
まず、受入れ体制の整備負担がこれまで以上に求められるでしょう。
例えば、外国人労働者に対する日本語教育や技能習得の支援、さらには生活面でのサポート体制の充実など、企業側で用意すべき支援が増えます。
特に日本語教育については、職場で円滑に業務を行うため欠かせない要素となるため、計画的な学習支援体制づくりが重要です。
次に、待遇面の改善と遵守が不可欠になります。
新制度では外国人にも日本人と同等以上の賃金支払いが義務付けられており、不当な低賃金や劣悪な労働条件の排除が期待されています。
企業は賃金基準を順守し、長時間労働の是正や安全管理、ハラスメント防止など職場環境の整備にも力を入れる必要があります。
また、優秀な外国人材の確保競争が激化する可能性も考えられます。
受入れ企業は自社に留まってもらえるよう労働環境やキャリアパスの提示など魅力づけを強化しなければなりません。
育成就労制度の導入にあたって、「いつから制度が始まるのか」「現行制度との切り替えはどうなるのか」は企業にとって非常に重要な論点です。
ここでは、制度の施行時期や移行措置、既存の技能実習生への対応などを整理して解説します。
育成就労制度は、改正法の公布日(2024年6月21日)から3年以内に施行される予定です。
政府は約2〜3年の準備期間を見込んでおり、現時点(2025年)では、2027年4月頃の施行が有力視されています。
施行日前であれば、一定の猶予期間中は、現行の技能実習制度による外国人受入れが可能です。
たとえば、施行日の3か月前までに在留資格認定証明書(COE)を取得していれば、施行後も技能実習制度のもとで入国・就労できます。
施行日時点ですでに日本で働いている技能実習生については、原則として在留資格や技能実習計画をそのまま継続できます。
つまり、制度変更によって途中で在留資格を失う心配はなく、現行の制度下で最長3年間までの就労が可能です。
新制度では、原則として技能実習制度を使った新規受入れはできなくなります。
育成就労制度への完全移行に備え、企業は早めに対応方針を見直し、体制を整えておくことが大切です。
移行期間中から関連情報をこまめに確認し、外国人材の受け入れ計画をスムーズに進められるよう準備を進めていきましょう。
育成就労制度にスムーズに対応するためには、企業側の事前準備が不可欠です。
ここでは、実務的に対応しておくべき主要ポイントを5つに分けて整理します。
外国人労働者が業務上必要な日本語を習得できるよう、体系的な日本語教育を行うことが求められます。
具体的には、専門の日本語教師の配置、eラーニングの活用、近隣の日本語学校との連携などが有効です。
日本語力の向上は、職場内でのコミュニケーション円滑化はもちろん、安全指導や顧客対応など、業務遂行力の向上にも直結します。
「育成就労計画」(旧:技能実習計画)を策定し、研修〜実務OJT〜資格試験受験までの育成プロセスを一貫して管理しましょう。
進捗の見える化や定期評価、フィードバック体制を整えることで、外国人が着実にスキルを習得し、企業の即戦力として成長しやすくなります。
新制度では一定期間後の転籍(転職)が可能になるため、企業間で優秀な人材の流出リスクが高まります。
その対策として、育成期間後の特定技能による雇用継続や昇格制度など、長期的なキャリアパスを提示し、将来展望を明確にしておくことが重要です。
仮に転籍希望があった場合でも、円満に送り出せる体制を整えるなど、信頼関係を築く姿勢が企業の評価にもつながります。
外国人にも日本人と同等以上の待遇を保証することが義務づけられます。
給与や福利厚生の充実、公平な評価制度、長時間労働の是正、有給休暇の取得推進、ハラスメント防止など、総合的な労働環境の改善が求められます。
これにより、定着率の向上だけでなく、企業ブランドや職場満足度の向上にも貢献します。
育成就労制度では、監理支援機関(旧:監理団体)や外国人育成就労機構との連携が不可欠です。
法令遵守のための手続きや定期報告の整備、監査対応に備え、常に最新のガイドラインや制度情報を把握しましょう。
育成就労制度は、企業の受入れ体制や人事運用に大きな影響を与える制度です。
正確な情報に基づいた対応を行うためには、外部の支援機関を活用しながら、常に最新の動向を把握しておくことが重要です。
育成就労制度への対応に不安がある企業は、専門機関や業界団体のサポートを受けるのが効果的です。
たとえば、公益社団法人東京都建設事業協会は、外国人技能実習生の受入れ支援に長年取り組んでおり、制度変更後も企業向けに情報提供や実務支援を行っています。
受入れの実務に関する相談や、制度改正に関する情報提供、講習会・研修なども実施しており、初めて外国人を受け入れる企業にとっては大きな味方になります。
育成就労制度の運用方針や詳細なルールは、制度施行後も見直し・検証が行われる方針となっており、内容が随時更新される可能性があります。
そのため、厚生労働省や出入国在留管理庁などの公的機関が発表する情報を定期的に確認し、制度の最新動向を把握しておくことが重要です。
育成就労制度への移行は、企業にとって課題であると同時に、優秀な外国人材を長期的に確保・育成するチャンスでもあります。
制度を正しく理解し、自社の受入れ体制を整えることで、外国人と企業双方にとって有益な雇用関係を築くことができます。
困ったときは自社だけで悩まず、公益社団法人東京都建設事業協会など信頼できる外部機関と連携することが成功の鍵です。
育成就労制度は、これまでの技能実習制度が抱えていた課題を見直し、企業と外国人材がともに成長できる仕組みとして再設計されました。
制度の目的や在り方が大きく変わることで、企業には新たな対応が求められますが、それは単なる制度対応にとどまらず、人手不足の解消や多様な人材の戦力化につながる大きなチャンスでもあります。
特定技能分野の企業にとっては、制度の内容を正しく理解し、早めに準備を進めることが成功の鍵となります。
その際には、外国人材の受け入れ支援に豊富な実績を持つ公益社団法人東京都建設事業協会のような専門機関のサポートを積極的に活用するのが効果的です。
育成就労制度を、未来の人材確保と企業成長の好機として、前向きに活用していきましょう。